ウソ!首相の原発事故収束宣言(No1435)

  誰もが「ウソ!」と思った。野田首相が行なった東電福島第一号原発の「事故収束宣言」である。宣言によると、原子炉を安定して冷却する「冷温停止状態」を達成。事故収束に向けた工程の「ステップ2」を完了した。「事故そのものは収束に至った」というのである。それにしても、8万2000人も避難者がいる状態で事故収束なのか。歯止めのかからない内閣支持率の下落と来年1月から始まる通常国会を前に、首相は苦し紛れに「事故収束」の強弁をしているが、かえって国民の不信を招いている。

  海外メディアはそろって懐疑的だ。米ニューヨークタイムスは「事故に対する世論の怒りを鎮めるためだけの勝利宣言だ。誇張された印象を与える」と述べている。米CNNテレビは「日本政府は画期的な出来事としようとしているが、現実は違う。約半年間の原発の状況は基本的に変わっていない」と懐疑的だ。ドイツのDPA通信も「まだ安全な状態とは程遠い。これで冷温停止を宣言するのはウソと紙一重だ。国民の判断を誤らせる」。韓国や中国のメディアも「事故収束宣言は性急だ」と言い、「宣言で日本政府は社会の批判にさらされる」としている。手厳しいものばかりだ。

  専門家からも驚きの声が挙がっている。「間違いじゃないの」というのは、京大原子炉実験所の小出裕章助教。「呆れた人たち」と沈黙。「私はそれ以外の言葉を捜せない」とそっぽを向く。東大の岡本孝司教授は「核燃料を取り出したときが事故の収束だと思っていた」としおり、「収束」と言う言葉が使われたことに驚いている。
 
  政府と東電は、原子炉から漏れた汚染水を浄化して再び炉内に戻し冷却に使う「ステップ1」を達成。「ステップ2」の原子炉内の温度を100度以下に下げ、放射性物質の外部への放出も抑える事に成功し、「冷温停止状態」を達成したとしている。現在、炉心溶融を起こした1~3号機は、原子炉内の温度を30~70度程度に落ち着かせる安定的冷却状態になった。放射性物質も被曝線量が年0・1㍉シーベルトと一般人限度の10分の1となったというのである。

  しかし「冷温停止状態」を通り越し、「事故収束」にまで踏み込んだ首相の発言には各方面で驚きが走った。原子炉は圧力容器の底が抜けて、溶けた核燃料が落下している。しかも実際はどんな状態なのかも分からないという。発電所は建屋が損傷しており、地下水の流入が止まらない。海への流出を阻止する遮水壁もできていない。高濃度の汚染水が外部に流失している状態が続いているのである。

  この状態を一番知っているのは現場で働く作業員たちだ。「言っている意味が理解できない。これから何十年もかかるのに、何を焦って年内にこだわっているのか」と驚く。「政府はウソばかりだ。被害は甚大なのに、なぜ本当のことを言わないのか」ともいう。「ろくに建物にも入らず中の状態が分かるのか。収束作業はこれからだ」とあきれた声が上がっている。原子炉が冷えたとはいえ、そのシステムは応急措置だから、また地震が起きたら、また冷やせなくなるというのである。  

  福島原発の事故で避難生活を送る人たちは、いまも8万3000人に上る。福島県の佐藤知事は「事故収束に向けた道のりは長く険しいことに変わりがない」としているが首相の発言に不快感を示している。避難生活を送る人たちは、「事故収束と言われても、放射線の心配もなくなったり、ガス、水道が直ったわけではない。家に帰って元の生活ができるわけじゃないから喜べない」と肩を落とす。

  3月11日の事故発生から9ヶ月余。火力とか水力とかの発電所の事故ならとっくに収束しているが、原子力発電所の事故は半減期が30年もする目に見えない放射能の事故である。旧ソ連のチェノブイリー原発事故が25年経っても収束せず、いま直、周辺30キロの立ち入りが禁止になっている。チェルノブイリーと同じ最悪レベルの事故と言われている福島原発が、なぜ、事故収束していると言えるのか。
  
  野田首相は就任した頃と比て話が下手になった。最近はよくウソをつく。日に日に顔色も悪くなっている。前任者や前々任者のように一年持たない首相になるかも知れない。


  
 

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